皆さん、いつまでも元気で、自分らしく活動的な毎日を送りたいですよね。

その願いを叶えるためのヒントが、世界保健機関(WHO)が2020年に発表した新しい「身体活動および座位行動に関するガイドライン」にはたくさん詰まっています。
このガイドラインは、私たちの健康に運動がどれほど大切かを科学的な根拠に基づいて教えてくれます。

特に、人生の後半戦をより充実させるための高齢者(65歳以上)向けの指針がさらに具体的になっている点が注目されています。

今回は、このWHOの最新ガイドラインをもとに、高齢者の皆さんが今日からでも実践できる「どんな運動を、どのように行えば良いのか」を、具体的な運動例と共にご紹介します。

1. なぜ運動が「より重要」になったのか

WHOのガイドラインは、心臓病、脳卒中、糖尿病、がんといった生活習慣病の予防はもちろんのこと、高齢者にとっては特に転倒予防、認知機能の維持、そして生活の質の向上に運動が不可欠であることを強調しています。

そして、今回のガイドラインで特に注目すべきは、

WHOガイドラインの重要ポイント
  1. 「少しでも動くことは、何もしないより良い!」 というメッセージ
  2. 「座りすぎのリスク」 を減らすことの重要性
  3. そして 高齢者には特に「マルチコンポーネント活動が大切」 と強調している点です。

では早速、具体的な運動方法を見ていきましょう。

2. 最低限やっておきたい運動量:有酸素運動と筋力トレーニング

WHOは、基本となる運動量として、すべての成人(高齢者を含む)に対し、以下の推奨を示しています。

WHO:推奨している運動
  • 中強度の有酸素運動週150~300分
  • または、高強度の有酸素運動:週75~150分
  • 筋力トレーニング週2日以上、全身の主要な筋肉を鍛える

「何分」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずは「毎日少しずつ」「無理のない範囲で」始めることが大切です。

2-1. 有酸素運動:ウォーキングから始めよう!

有酸素運動は、心肺機能を高め、体力向上や生活習慣病のリスクを減らすのに役立ちます。

2-1-1. 中強度ってどのくらい?

  • 普通の会話はできるが、歌うのは難しいと感じる程度の運動です。
  • 「少し息が弾む」「じんわり汗をかく」のが目安です。

2-1-2. 有酸素運動の具体的な実践例

運動方法具体的な実践例進め方のポイント
ウォーキング– 近所の公園まで歩く、買い物に行くときに少し遠回りする。
– 腕を大きく振り、やや早歩きを意識して、背筋を伸ばして歩く。
– まずは1回10分から始め、慣れてきたら30分、50分と時間を延ばしましょう。
– 週3~5回を目標にし、合計で週150分以上を目指すと良いです。
踏み台昇降– 低い段差(安定した台や不要な箱)を使って、昇り降りを繰り返す。
– テレビを見ながら、音楽を聴きながらでもOK。
– 膝への負担が少ないよう、段差は低め(5~10cm程度)から始めましょう。
– 転倒しないよう、近くに手すりや壁があると安心です。
水中ウォーキングプールの中で歩く。水の抵抗は筋力アップにも繋がります。
ゆっくり水泳– ビート板を使うと楽に泳げます。
– ゆっくり長い距離を泳ぎましょう。
– ひざや腰への負担が少ないので、関節に痛みがある方におすすめです。
– 初心者向けのクラスから始めましょう。
– 経験豊富な指導者から学ぶことを推奨。

2-1-3. 実践例の動画を掲載しておきます。

・ウォーキング https://www.youtube.com/watch?v=GjccTAHGFes

・踏み台昇降 https://www.youtube.com/watch?v=UALT6Oqa5UU

・水中ウォーキング https://www.youtube.com/watch?v=kJpq_DRZ3C8

・ゆっくり水泳 https://www.youtube.com/watch?v=6IdlgzT7hZc

2-2. 筋力トレーニング:いつまでも自分の足で歩くために!

筋力(特に足腰の筋肉)を保つことは、転倒予防や日常生活の動作(立つ、座る、階段を上るなど)を楽に行うために非常に重要です。

2-2-1. 筋力トレーニングの具体的な実践例

運動方法具体的な実践例進め方のポイント
椅子スクワット– 安定した椅子の前に立ち、お尻を後ろに引くようにゆっくり腰を下ろし、椅子に軽く触れたら(または座りきる手前で)立ち上がる。
– 膝がつま先より前に出ないように注意。手のひらを胸の前で合わせるとバランスが取りやすいです。
– 10回を1セットとして、無理のない範囲で2~3セット。
– 最初は椅子に座りきってもOK。慣れてきたら座りきる手前で止める、手を使わないなど負荷を上げましょう。
かかと上げ安定した場所(壁やテーブルの横)に立ち、軽く支えながらかかとを上げて、つま先立ちになる。ゆっくりかかとを下ろす。– 15回を1セットとして、2~3セット。
– ふくらはぎは「第2の心臓」とも言われ、全身の血行促進にも繋がります。
テーブル腕立て伏せテーブルから少し離れて立ち、手のひらをテーブルの端について、ゆっくりと肘を曲げて体をテーブルに近づける。その後、ゆっくりと押し返す。– 10回を1セットとして、2~3セット。
– 胸や腕の筋肉を鍛え、物を持ち上げたり、体を支えたりする力がつきます。
チューブエクササイズトレーニングチューブを使い、足を開いたり、腕を押し出したり引いたりする運動。– スポーツ用品店などで手軽に入手できます。
– 専門家のアドバイスを受けながら行うとより効果的です。

2-2-2. 実践例の動画を掲載しておきます。

・椅子スクワット https://www.youtube.com/watch?v=711CXT_ItVM

・カーフレイズ(かかと上げ) https://www.youtube.com/watch?v=oVbkeODJNSE

・テーブル腕立て伏せ https://www.youtube.com/watch?v=nDMolpOW4b4

・チューブエクササイズ https://www.youtube.com/watch?v=RAmOhQmzOCQ&t=372s

3. 高齢者だからこそ重視したい!「マルチコンポーネント活動」

WHOは、高齢者に対して、有酸素運動や筋力トレーニングに加えて、特に「機能的能力を高め、転倒を予防するため」に、多様な要素を組み合わせた「マルチコンポーネント活動」を週3日以上、中強度で行うことを強く推奨しています。

3-1. マルチコンポーネントとは?

筋力トレーニング、バランス運動などの多様な要素を含む運動を行うことです。

3-2. なぜマルチコンポーネント活動が重要?

年齢を重ねると、バランス能力や柔軟性が低下しやすくなります。これが転倒の一因となります。

ルチコンポーネント活動は、これらの能力を総合的に高めることで、転倒を事前に防ぎより長く自立した生活を送ることを支援します。

3-2-1. マルチコンポーネント活動の具体的な実践例

単に特定の動きをするだけでなく、「どのように組み合わせるか」がポイントになります。

運動方法具体的な実践例進め方のポイント
ラジオ体操毎日続けることで、全身の軽い筋肉トレーニング、バランス運動と柔軟運動ができます。– テレビやラジオに合わせて、毎日行う習慣をつけましょう。
– 自宅で行う場合は、オンライン動画などを参考に、安全に配慮して行いましょう。
– 多くの高齢者は小学校、中学校で経験済みです。
ウォーキング+αデューク更家式ウォーキング– ウォーキングに気功、ヨガ、バレエ等の動作が組み込まれています。
– 単純な動作の繰り返しで、高齢者でも容易に行えます。
– DVD付き書籍が販売されています。
太極拳ゆっくりとした動作で重心移動を伴い、全身のバランス感覚と体幹を鍛える。呼吸法も学ぶ。– 初心者向けのクラスから始めましょう。
– 経験豊富な指導者から学ぶことを推奨。
– 自宅で行う場合は、オンライン動画などを参考に、安全に配慮して行いましょう。
ダンス音楽に乗せて自由に体を動かす。足のステップや腕の動きを組み合わせ、全身を使う。– 地域の公民館やフィットネスクラブの高齢者向けダンス教室もおすすめです。
– 自宅で行う場合は、オンライン動画などを参考に、安全に配慮して行いましょう。
ヨガ体幹を意識し、深い呼吸と共にポーズを保持したり、ゆっくり動いたりすることで、バランス、柔軟性、筋力を高める。– 初心者向けのクラスから始めましょう。
– 経験豊富な指導者から学ぶことを推奨。
– 自宅で行う場合は、オンライン動画などを参考に、安全に配慮して行いましょう。
ガーデニング庭土を掘る(筋力)、草むしりでしゃがむ(柔軟性)、重いものを運ぶ(筋力)、広い庭を歩き回る(有酸素)。– 無理のない範囲で、休憩を挟みながら行いましょう。
– 直射日光を避け、水分補給を忘れずに。

3-2-2. 実践例の動画を掲載しておきます。

・ラジオ体操 https://www.youtube.com/watch?v=RNlB93CuwOI

・太極拳 https://www.youtube.com/watch?v=0s2NErs0Tys

・ダンス https://www.youtube.com/watch?v=A0O3uFy7hLI&t=610s

4. 「座りすぎ」は健康の敵!対策も忘れずに

WHOは、座りすぎが健康に有害であることにも警鐘を鳴らしています。特に高齢者にとっては、長時間座ることで、死亡率の上昇、筋力の低下、心臓病や糖尿病のリスクが高まる可能性があります。

4-1. 座りすぎ対策の実践例

座りすぎ対策
  • 意識的に「立つ」時間を作る:テレビのCM中や電話中に立ってみる。
  • ちょこちょこ運動:1時間に1回は立ち上がり、軽いストレッチやその場足踏みを行う。
  • 座っている姿勢でも体を動かす:足首を回したり、かかとを上げ下げしたりするだけでもOK。
  • 椅子に座ってできる筋力トレーニング:テレビを見ながら、足の上げ下げや握力強化運動を行う。

まとめ:あなたのペースで、楽しみながら続けよう!

運動は、単に体を鍛えるだけでなく、気分転換になり、社会とのつながりを生み出すきっかけにもなります。

「健康な体は1日にしてならず」と言いますが、今日から少しずつ始めてみませんか?

もし、持病がある方や運動に不安がある方は、必ず事前に医師や専門家(理学療法士など)に相談してから、ご自身の体調に合わせた運動計画を立ててください。

皆さんがこのガイドラインを参考に、健康で充実した毎日を送れるよう応援しています。

WHOのガイドラインが伝える最も大切なメッセージはシンプルです。

完璧じゃなくていい。少しでも体を動かすことが健康への第一歩!!