「尿もれ」という言葉を聞いたとき、多くの方は女性特有の問題を思い浮かべるかもしれません。確かに、妊娠や出産を経験する女性では骨盤底筋が弱りやすく、尿もれが起こりやすいことが知られています。しかし実際には、多くの男性も尿もれに悩んでいるのです。特に「トイレを済ませた直後に下着が濡れてしまう」「ズボンにシミができて恥ずかしい」といった症状は、男性特有の「排尿後尿滴下(ちょいモレ)」として広く知られています。
実をいうと、私も60歳頃から、この「ちょいモレ」に悩んでいました。しかし、今回の記事を書くにあたって、多くの男たちが、同じ症状に悩んでいることを知って、少し、安心した次第です。「出し切る」を心掛けるようになって、頻度は少なりましたが、排尿の時間は長くなりました。
本記事では、調査データをもとに男性の尿もれの実態を解説し、女性との違いを整理した上で、男性特有の「ちょいモレ」の原因と対策について詳しく見ていきます。
男性の尿もれ事情
小林製薬は2021年に3280万人の40~70代男性を対象に、男性の尿もれ事情について大規模調査を行いました[1]。それによると、1年以内に尿もれ経験者は407万人でした。すなわち、40〜70代男性の約8人に1人が尿もれを経験したことになります。この調査によって、男性の尿もれは決して少数派ではなく、多くの男性が悩みを抱えていることが分かります。
男性の尿もれで最も多いのは、「排尿後尿滴下」と呼ばれる、おしっこ直後に起こる尿もれでした。いわゆる「ちょいモレ」です。男性の尿もれの79%がこのタイプです。加齢によって膀胱や尿道を締める筋肉の衰えや前立腺肥大症によって、尿の勢いが低下することが原因とされています。

次いで、急な尿意を我慢できずに漏れてしまう尿もれでした。34%がこのタイプです。「切迫性尿失禁」と呼ばれます。その原因としては、加齢や骨盤底筋の衰えによって、膀胱に尿が十分にたまっていなくても、膀胱が過剰に活動することで、尿もれが起きてしまいます。

「切れが悪くて時間がかかる」「下着が濡れてニオイが気になる」「ズボンにシミができて恥ずかしい思いをした」といった悩みが報告されています。私も同じような経験があります。おなたはどうですか? 同じ悩みを持つ同類が沢山いること知って、安心されたのではないでしょうか。
引用元[1]:https://www.kobayashi.co.jp/brand/morenakuto/men/
女性の尿もれ事情
小林製薬は、同じく、女性の尿もれ事情についても大規模調査を行いました[2]。3420万人の40~70代女性を対象に行われています。それによると、1年以内に尿もれ経験者は748万人でした。すなわち、40〜70代女性の約5人に1人が尿もれを経験していることになります。
女性の尿もれで最も多いのは、くしゃみや重い荷物を持ち上げたときなど、お腹に強い圧力がかかった瞬間に漏れる「腹圧性尿失禁」でした。女性の尿もれの80%がこのタイプです。膀胱を支えている骨盤底筋の緩みが原因とされています。加齢や出産によって骨盤底筋が弱まり、尿道を締める力が低下すると考えられています。

次いで、尿意を我慢できずに漏れてしまう「切迫性尿失禁」が続きます。34%がこのタイプです。原因としては、膀胱の過敏化が原因とされています。加齢や筋肉の衰えで膀胱が過剰に収縮し、尿意を我慢できなくなります。

男性と女性の尿もれ原因の違い
尿もれの原因は男性と女性で異なります。男性の場合には、膀胱や尿道を締める筋肉の衰えや前立腺肥大症によって、「排尿後尿滴下」と呼ばれる、おしっこ直後に起こる「ちょいモレ」が、もっとも多いのにたいして、女性の場合には、加齢や出産によって骨盤底筋が弱まり、お腹に強い圧力がかかった瞬間に漏れる「腹圧性尿失禁」がもっとも多い、という違いがみられました。
「ちょいモレ」対策方法
ユニチャームは20代~50代の男性1000人を対象に尿もれの調査を行いました。それによると、20代~50代の男性の、実に84.6%が「ちょいモレ」を経験していました。ユニチャームは「ちょいモレ」に対して、以下のような対策を推奨しています[3]。
- 座って排尿する:立って排尿すると尿道に尿が残りやすいですが、座って行うことで尿が出やすくなります。
- 会陰部を押して尿を絞り出す(ミルキング):排尿後に会陰部(陰嚢裏側)や陰茎根部(尿道球部)から外尿道口にかけて指先で尿道をしごき、、尿道球部に残った尿を押し出す。
- 球部尿道内残尿量はわずか0.2〜1.0mLです。リンクで紹介している失禁パッドも尿もれ対策として有用と思います。

- 生活習慣の改善
肥満対策や適度な運動は、肥満による膀胱や尿道への負担を減らす。 - 骨盤底筋体操(ケーゲル体操)[4]
骨盤底筋を鍛えることで、尿道を締める力を回復させます。ケーゲル体操の方法は、女性の場合と同じです。以下に方法を紹介します。
①仰向けに寝て、足を肩幅に開き、両ひざを軽く立てて、体をリラックスさせます。
②その姿勢のまま、肛門まわりの筋肉を、1分間のうち12~14秒ほど締めます。肛門、尿道を締め、陰部全体をじわじわっと引き上げるイメージです。
③1分間のうち、残りの40秒ほどは、体の力を抜き、全身をリラックスさせます。
④このサイクルを10回くりかえします。きつい方は、2~3回から始めましょう。

引用元[3]:https://jp.lifree.com/ja/sawayakamen/care/vol1.html
引用元[4]:https://jp.lifree.com/ja/sawayakamen/five/v5.html
まとめ
- 男性の尿もれは40〜70代で約8人に1人、女性は約5人に1人が経験。
- 女性は「骨盤底筋の緩み」による腹圧性尿失禁が多く、男性は「排尿後尿滴下(ちょいモレ)」が多い。
- 男性の「ちょいモレ」は、加齢による筋肉低下、前立腺肥大、肥満や神経障害など複合的な要因で起こる。
- セルフケアとして「座って排尿」「ミルキング」「骨盤底筋体操」「生活改善」「尿失禁パッド」が有効。
- 恥ずかしさから我慢せず、症状が強い場合は泌尿器科を受診することが大切。
「尿もれは誰にでも起こりうるもの」です。正しい知識と工夫を取り入れれば、快適な日常を取り戻すことは十分に可能です。