毎日の食卓に欠かせない油脂。オリーブオイル、ココナッツオイル、バターなど、種類がたくさんあって「どれを選べばいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか?

これらの油脂は、私たちの体、特にコレステロールにさまざまな影響を与えます。コレステロールというと「悪者」というイメージがあるかもしれませんが、体に不可欠なものです。

今回は、2018年に行われた信頼できる研究結果をもとに、オリーブオイル、ココナッツオイル、バターがコレステロールにどう影響するか、そして健康のためにどう取り入れれば良いかをご紹介します[1]。

コレステロールには「悪玉」と「善玉」があるのをご存じですか

私たちの体には、細胞の膜やホルモンの材料になるコレステロールが必要です。コレステロールは血液に乗って全身を巡りますが、その運び方によって「悪いコレステロール」と「良いコレステロール」に分けられます。

コレステロールの種類
  • LDLコレステロール(悪玉コレステロール):肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割があります。増えすぎると血管の壁にたまり、動脈硬化(血管が硬くなり、狭くなること)を進めてしまうため「悪玉」と呼ばれます。
  • HDLコレステロール(善玉コレステロール):全身の余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す役割があります。動脈硬化を防ぐ働きがあるため「善玉」と呼ばれます。

悪玉コレステロールが増えすぎたり、善玉コレステロールが少なすぎたりすると、心臓病や脳卒中といった怖い病気のリスクが高まってしまいます。そのため、日々の食事でコレステロール値を適切に保つことがとても大切です。

イギリスで行われた興味深い比較研究

今回紹介する研究では、50〜75歳の健康な男女(約90人)が対象になりました。参加者は3つのグループに分けられ、それぞれ異なる油脂を4週間毎日摂取しました。

グループの内容
  1. 一つ目のグループは、エキストラバージンオリーブオイルを毎日50g摂取しました。
  2. 二つ目のグループは、エキストラバージンココナッツオイルを毎日50g摂取しました。
  3. 三つ目のグループは、無塩バターを毎日50g摂取しました。

50gという量は、かなり多めです。オイルなら大さじ4杯ほどになり、カロリーでは約450kcalに相当します。つまり、この研究は「それぞれの油脂をしっかり摂った場合、体にどのような変化が起きるのか」を比較した研究と言えます。

オリーブオイル、ココナッツオイル、バター、それぞれどう違う

1. オリーブオイルはやはり「安定の優等生」だった

  • LDLコレステロール(悪玉):ほとんど変化ありませんでした。
  • HDLコレステロール(善玉):わずかに増加しました。

エキストラバージンオリーブオイル(以下、オリーブオイル)を摂取したグループでは、悪玉であるLDLコレステロールの大きな上昇は見られませんでした。

オリーブオイルには、オレイン酸」という不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。この脂肪酸は一般的にLDLコレステロールを上げにくいと考えられています。

オリーブオイルにはポリフェノールなどの抗酸化成分も多く含まれており、炎症を抑えたり、血管を保護したりする働きが期待されています。

オリーブオイルは「地中海食」の中心的な存在です。地中海食は、野菜や魚、豆類、ナッツ、そしてオリーブオイルを豊富に摂る食事スタイルで、心筋梗塞や脳卒中リスクを下げる可能性があることで有名です。

今回の研究結果は、そうしたこれまでの知見とも一致する内容でした。やはりオリーブオイルは、「毎日の基本の油脂」として安心感の高い存在だと言えそうです。

2. ココナッツオイルは「予想外の結果」を示した

  • LDLコレステロール(悪玉):ほとんど変化ありませんでした。
  • HDLコレステロール(善玉):大きく増加しました!

今回の研究で、最も研究者たちを驚かせたのがココナッツオイルでした。

ココナッツオイルは、成分の約90%が飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸は一般的に「LDLコレステロールを上げやすい油脂」と考えられているため、研究者たちも、ココナッツオイルはバターに近い結果になるだろうと予想していました。

しかし実際の結果は違いました。

ココナッツオイルは、バターほどLDLコレステロールを増加させなかったのです。オリーブオイルとの比較でも、大きな差は見られませんでした。

これは研究者たちにとっても意外な結果だったようで、論文中でも「予想外だった」と述べられています。

さらに興味深かったのは、ココナッツオイル群では、善玉であるHDLコレステロールが最も大きく増加したことです。

今回の結果だけを見ると、「ココナッツオイルはかなり健康的なのでは?」と思うかもしれません。

3. バターはやはり“摂りすぎ注意”

  • LDLコレステロール(悪玉):大きく増加しました。
  • HDLコレステロール(善玉):ほとんど変化ありませんでした。

バターは、乳製品由来の動物性脂肪で、飽和脂肪酸という種類の脂肪が豊富です。この飽和脂肪酸は、過剰に摂ると悪玉コレステロールを増やしやすいことが知られています。

悪玉コレステロールが増えると動脈硬化のリスクが高まるため、心臓の健康を考えると、摂りすぎには注意が必要です。

ココナッツオイルとバター。なぜ同じ「飽和脂肪酸」でこんなに差が出るの

ココナッツオイルもバターも、同じ飽和脂肪酸なのに、なぜこんなに結果が違うのでしょうか。

その秘密は、油脂を構成する脂肪酸の長さ(種類)にあります。

コノナッツオイルとバターの違い
  • ココナッツオイル:主成分のラウリン酸などは、中鎖脂肪酸と呼ばれるグループに属します。これらは体内に吸収されたあと、素早く肝臓に運ばれてエネルギーとして消費されやすいという特徴を持っています。
  • バターパルミチン酸などの長鎖脂肪酸が多く含まれており、これらは体内で代謝されるプロセスが異なり、コレステロールを上げやすい性質があります。

つまり、「飽和脂肪酸=すべて悪者」とひとくくりにするのではなく、「何の食品からその油脂を摂るか」がとても重要だということです。

健康のために、どう選んでどう使う

今回の研究結果と、これまでの様々な研究を踏まえると、それぞれの油脂を次のように取り入れるのがおすすめです。

オリーブオイル(特にエクストラバージン):積極的に取り入れたい「健康優等生」
  • おすすめの摂り方:サラダのドレッシング、パンにつける、炒め物、煮込み料理など、幅広く使えます。加熱にも比較的強いですが、香りを楽しむなら生のまま使うのが一番です。
  • 健康へのメリット:悪玉コレステロールを増やさず、善玉コレステロールを保ちやすいです。動脈硬化の予防に役立つ可能性が高いです。
  • ポイント:特に「エクストラバージン」と表示されたものを選びましょう。ポリフェノールなどの抗酸化物質も豊富に含まれています。
ココナッツオイル:試してみたいけど、摂りすぎは禁物!
  • おすすめの摂り方:ココナッツの甘い香りが合うスイーツや、アジアンテイストの炒め物などに少量使うのが良いでしょう。
  • 健康へのメリット:悪玉コレステロールを増やさずに、善玉コレステロールを増やす効果が期待できます。
  • ポイント:飽和脂肪酸が多いことに変わりはないため、長期的に大量に摂った場合の健康への影響は、まだはっきりわかっていません。あくまで風味付けや気分転換に少量使う程度に留めましょう。
バター:風味を楽しむ「ごちそう油脂」として少量に!
  • おすすめの摂り方:パンに塗る、料理の仕上げに風味付けとして使うなど、少量を大切に味わうのがおすすめです。
  • 健康リスク:悪玉コレステロールを増やしやすいことが分かっています。過剰な摂取は動脈硬化のリスクを高める可能性があります。
  • ポイント:バターの豊かな風味は魅力的ですが、毎日のように大量に使うのは避け、特別な時に少量楽しむ「ごちそう」と考えると良いでしょう。マーガリンにはトランス脂肪酸が含まれていることが多いので、製品を選ぶ際は注意が必要です。

本日のまとめ&食生活へのヒント

今回の研究から見えてきたのは、「油脂は種類によって体への影響がかなり異なる」ということでした。

オリーブオイルは、やはり安定して健康的な結果を示しました。毎日の料理に使う基本の油脂として、非常に優秀な存在と言えそうです。

ココナッツオイルは、予想よりも良好な結果を示しました。ただし、長期的な安全性については、まだ十分な研究があるわけではありません。健康食品として大量に摂るよりは、「風味を楽しみながら適量を使う」くらいが現実的でしょう。

バターは、やはりLDLコレステロールを上げやすいことが確認されました。完全に避ける必要はありませんが、“ほどほど”を意識することが大切です。

健康情報は、「○○は絶対に悪い」「○○だけ食べれば健康になる」と極端になりがちです。しかし実際の栄養学は、もっと複雑です。

大切なのは、極端な情報に振り回されず、それぞれの食品の特徴を理解しながら、無理なく続けられる食生活を選ぶことなのかもしれません。

参考にした文献
[1] Khaw, K.T., et al. Randomised trial of coconut oil, olive oil or butter on blood lipids and other cardiovascular risk factors in healthy men and women. 2018 Mar 6;8(3):e020167. doi: 10.1136/bmjopen-2017-020167.